Kaleidscopic Gallery Scene

岩熊力也 2005. 5/9-14

コバヤシ画廊企画室
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「存在していない存在感が好きというか・・・そっちの方がむしろ存在感を感じる。たとえば“いない人”みたいな・・・別の存在の仕方を絵画は扱えるんじゃないかと思っています。」

・・・まず、絵を描きはじめたきっかけを教えて下さい。

大学で映画の勉強をしていたんです。2年で中退したんですが、映画を撮りながら絵を描いていました。当時は絵描きになろうなどとは思っていなくて、なんとなく描いていただけなんですけどね。でも映画には向いていないことに気がついて、一人でやれるものがいいと思って・・・。

・・・作品にラテックスを使っていると聞きましたが、ラテックスって絵の具なんですか?

ラテックスは液体状のゴムで、乾くとゴムになるんですけど・・・仮にくっついて、あとから剥がすと上に塗った絵の具が弾かれるというか・・。

・・・弾かれた部分をみると、古い建物の塗装が剥がれ落ちた感じみたいな・・・。それは人の皮膚が時間を追うごとに朽ちていくさまにも似ている。初めからこういう描き方をされていたんでしょうか。

 

最初の個展はキャンバスに油絵の具で描いていたんですが。そのときからもう表面を剥がしてるんです。描くというよりも、傷つける作業がはじめからありました。

・・・画面にキャンバスではなく、ポリエステルを使うのは何故?

壊していく上で・・・なぜ壊したいのかというと、キャンバスを自己表現の器だと思うと、どんどん増えていくばかりなのでそういうものにしたくはなかった。むしろ減らしていきたいというか・・・だからだんだん薄くなっていったというか・・・。

・・・今回の展覧会には「辻斬り」のシリーズと、「藪」のシリーズが展示されていますが、タイトルが面白いですね。

「藪」のシリーズから「辻斬り」のシリーズへと移行していったんです。藪というのはブッシュなんです。ちょうどイラク戦争のころに描いていて、僕のアトリエの周りも、藪で覆われていました。「藪」のシリーズはその“やぶ”が前面に出ていたんです。でも描いているうちに、何にか違うなと思って「辻斬り」のシリーズを描きはじめました。だから「辻斬り」のシリーズは藪を切る。藪を剥がす作業からはじまっています。

・・・剥がす作業が儚さを生むのかな・・・。ポリエステルを使われているから、光が透過するので、フワーとして見える。でも油絵的な発想では、キャンバスに絵の具を塗り重ねて、マチエールを作ることで物質として表現するじゃないですか・・・岩熊さんの作品を拝見していると、今までの絵画と対峙している姿を感じたというか。

ポリエステルを使ったのは、映画を作っていた影響があると思う。スクリーンというか・・・物質というよりも光を通すものだから。
それに・・・「存在してます」というのが苦手なんです。存在していない存在感が好きというか・・・そっちの方がむしろ存在感を感じる。たとえば“いない人”みたいな・・・別の存在の仕方を、絵画は扱えるんじゃないかと思っています。

・・・岩熊さんのイメージをたとえば言葉に置き換えるならば・・・。

描く前の心持ちというのは、失われたものとか絶滅した動物とかをテーマみたいにしていますが、その具体的な姿を描きたいのではなく。そういうものがないと向かえないというか・・・動機として・・・。

・・・なるほど。ところで「辻斬り」のシリーズの絵の具の剥がれはこれ以上酷くならないんですか。

定着している部分は普通に定着してます。浮いている部分は剥がれるかもしれない・・・。

 

ありがとうございました。

私は絵の具の剥がれていくさまに、岩熊さんの死生観が見えたように思います。
時間と共に少しづつ、少しづつ・・・消滅していくもの達。



『朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水のあわにぞ似たりける』 方丈記より。

(C) Iwakuma Rikiya

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