岡本啓 展
2005.8/1-8/13



ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F TEL 03-3281-7808 FAX 03-3281-7848
11:00-18:30(最終日p.m.5:00まで) http://www.gallery-tsubaki.jp/tsubaki.html


1981 大阪生まれ/2004. 大阪芸術大学美術学科卒業/2004 個展 ギャラリー椿GT2/2005 個展 ギャラリー椿GT2




・・・AVIGNON とVICTOIRE。この2つのタイトルはなんと読むのですか。

ピカソのアビニヨンAVIGNON とセザンヌのビクトワールVICTOIREです。
僕は写真を使って制作しているんです。

丁度19世紀後半に写真が生まれ、当時は絵画の持つリアリティーが全部写真に奪われたような形になり、それを復権したのが、セザンヌだったと思うんです。ピカソにしてもAVIGNON は絵画にしか出来ない絵画としてのオリジナリティーを追及して表現された作品だと思います。僕はセザンヌからピカソへの流れがあると思っていますので、今回の展覧会は、そういう写真から反転したリアリティーを作った人達に対してのオマージュであり、逆に「写真でもこういう事が出来るんだ」という挑戦でもあるんです。そういう意味がこのタイトルに込められています。

・・・すごく色が綺麗な作品ですね。

綺麗というのは大事な要素だと思うんです。見に来られた方が「綺麗だ」と思いながら、その言葉が扉となって人の心を開いてくれると思っているんです。

・・・写真を使われているという事ですが、どのように制作されているんでしょうか。

カメラを使って撮影するのではなくて・・・。カメラを使わない写真というか。
元々印画紙自体に赤、黄、青の三原色が潜んでいるのはご存じですか。
写真は、被写体を撮影するというイメージがありますし、普通の現像の場合はそれを浮き上がらせるんですけど、僕はカメラを使わないで光や薬品だけを使って像を浮かび上がらせているんです。

・・・光や薬品は環境や状況によって変化するから大変ですね。

今までのデーター(湿度や温度、光の照射時間、自然光と人工光など)をもとにして色を出していきます。ですから現像部分を拡大解釈して写真という言葉を使っていますが、写真という言葉を使う必要もないのかもしれません。でもこれは何ですかと聞かれた場合は、写真と答えています。

・・・印画紙に三原色が潜んでいるとは知りませんでした。

カラーの印画紙は5層になっていて1番下にベースとなる紙があって赤、青、黄と入って、1番上に保護膜がついているんです。その赤、青、黄のバリエーションを薬品を使って好きな色を引き出していくんです。

 

・・・岡本さんの作品は、原初の胎動みたいなイメージがありますね。それがセザンヌやピカソに通じるような気もするし、新しい試みだと思いますね。でもアクリル樹脂を使っているのは何故ですか。

最初に鉱石のイメージがありました。刻印された硬質なイメージを出すという意味もあります。それに単純に作品の保護の目的もあるんですけどね。

・・・薬品を使っているから、色止めのフィニッシュの判断はどうなるんでしょうか。

やり方を説明すると分かりづらくなると思うんですけど、時間が経つと完全に固定されてしまう状態になります。でも「画面を完全に作ってから、さぁ、作品が出来た」という状態で終わるわけではないですね。完全には決められないです。

・・・ゆらぎがあるという事ですか。

相手にゆだねる部分はあります。たとえば次の日に見ると、昨日は見えていなかった色が出ていたりするし、その日の光の強弱によっても色が変わってしまう。ただそれだけに任せきってしまうと作品が成立しなくなってしまうので、そこが僕が立たなければいけない場所だと思っています。そこに作家としての意識が入るんです。

 

・・・何かきっかけがあってこのような手法を考えたんでしょうか。

僕の経歴からお話しますと、大学で絵画コースを選択して、写真を学び始めたんです。でもそれまでカメラを持っていなかったし、写真を1枚も撮った事がなかったんですよ。写真が苦手でとても嫌いだったんです。何故嫌いだったかというと、あまりにもフラットなイメージだし、写されている被写体を見ても何も感じないからです。
でもある時、それはミニマルアートにかぶれていた時期なんですが、丁度箱の形態の作品を作っていまして、ある日ピンホールカメラを思い浮かべたんです。ピンホールカメラは、穴を開けるだけじゃないですか。それが初めての僕の写真の体験だったので、まっさらな状態で素材として向き合う事が出来たように思います。

実際にその時に独学で現像してみて、今まで思っていたフラットなイメージで像だけが写っている写真と、現像した瞬間に浮き上がってくる写真のイメージが、まったく逆になって、こんなに素材感にあふれているものなんだという事に、気がついたんです。それが最初のきっかけだった事はとても良かった事だと思います。それから写真について興味が出てきて今につながってきているんです。

・・・作品との距離が、すごくあるような気がするんですよね。ある意味アクリルの中に、永遠を閉じ込めているような距離感にも通じるというか・・・。

絵を描いていた時期からこの作品に移行したのは、距離を近づけ過ぎる事に違和感をずっと持っていたからなんです。川俣正が書いた文章を読んだ事があるんですが、“絵に対する情熱は一切なかった。それでも自分が制作していく場合に、どういう作品を作ればいいのかをすごく考えた”と・・・。そういう事かと妙に実感として納得した部分があったというか・・・。川俣さんの場合はああいう作品になったと思うんですけどね。

・・・なるほど。ただ2004年の個展の作品(http://www.gallery-tsubaki.jp/2004/040712gt.htm)はオブジェでしたよね。今回の作品との繋がりが今ひとつ分からないんです。

以前は、「こんな事が出来る。あんな事も出来る」という形の展覧会だったと思うんです。それこそもっと距離のない作品も制作していました。
それを今後出すかどうかわかりませんが、もう少し作品の幅を持たせたいとも考えているんです。以前のオブジェを捨てたわけではないし、心境として変化したわけではないんですけど・・・。

・・・そうするとこれからは?

いつか分厚いアクリル板を使って、大きい写真の作品を焼いて、一つの空間に一つの作品を置くような展示をしたいと思っているんです。

〜13日まで。

(c)OKAMOTO AKIRA