南館麻美子 “動物幻想国 [5人の作家による立体造形 展]”
2005.7/23-8/28



相模原市民ギャラリー
神奈川県相模原市相模原1-1-3 駅ビルNOW 4F
TEL 042-776-1262
http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/museum/gallery/galleryindex.html


1971岩手県に生まれる/1996版画協会展(以後毎年出品)/1997 The 3rd British international miniature print exhibition、第4回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ/1998 第1回大野城まどかぴあ版画展池田満寿夫大賞受賞、個展・ぎゃらりーこいち(東京)/1999 個展・Gallery Jin(東京)、第18回伊豆美術祭絵画公募展賞候補/2000 第19回伊豆美術祭絵画公募展賞候補/2001 個展・Za Gallery(東京)/2002第10回プリンツ21グランプリ展版画特別賞受賞、個展・リベラル(広島)/2004第1回東京コンペ佳作、個展・諄子美術館(岩手)/2005 個展・湘南台画廊(藤沢)


・・・タイトルは「スピード感のある部屋」と「イエネコのいる部屋」、タイトルが二つついているのはなぜですか。

タブローを含めた左側の展示と、右側の壁面の展示とはテーマが違うんですけど、今回はまとめて一つの展示にしてあります。
「スピード感のある部屋」の作品は、身体が棒のようになっているので、スピード感のある飛んでいるイメージを表現しています。この「行く手を阻むものはない」は、小さいんですけど凄い勢いで進んでいるもの・・・勢いを表現しているんですよ。隣にある作品は、走り続けて喪失状態にあるので、顔がまっしろなんです(笑)。
ポスターにこの「行く手を阻むものはない」が掲載されていますが、クローズアップすれば大きく感じるかもしれないけれど、実はちっぽけなものかもしれないという意味もあるんです・・・。

・・・なるほど。

「イエネコのいる部屋」は、家から首を出している猫みたいなものを創っているというか。

・・・猫ですか?

「イエネコ」は、“猫”ということになっていて、いわば言葉遊びのような・・・人間が家庭で飼っている家猫と、“イエネコ“という言葉から連想されるイメージを引っかけて創った形態なんです。私は子供のころから部屋を眺めているのが好きで拘りや愛着があるんですけど、これは都会のオフィス街に「家的な空間を作り上げたい」というコンセプトをもとに制作したものなんです。

・・・作品の雰囲気が、南館さんに似ていますが自画像なんでしょうか。

よくいわれますが。自画像というのではなくて・・・似ているとしたら、自分の存在や姿が出てきているからかもしれません。「イエネコ」を四つ配置したのは、自分の家族のイメージともダブっている部分があるんです。

ただ“私とか、私の家族”というダイレクトな一人称ではなく、みんなの心の中にも、私の心の中にもある「個人の古い記憶や、子供のころの体験、遠い記憶のぼんやりとした曖昧さ、掴みきれないイメージ」などを出していきたいと思っているんです。
誰かを語るとき、その人のルーツはすごく大事だと考えています。それなので、自分でも気づかないうちに影響を与えられているかも知れない古い記憶、幼少時代、家庭というものなどに焦点をあてました。「イエネコ」が背負っている家は、昔の記憶とともに個人が背負っているものかもしれませんね。

 

・・・98年頃から版画(http://www.gaden.jp/arts/minamidate.html)を拝見していますが、その頃から四本足の動物がいたり、黒い忍者モドキがいたり、そういえば「Roadside crossroads」には「イエネコ」も登場していますね。

特に「何の動物か」ということは限定はしていなかったんですよ。ミミがあったり、四本足だったり、頭巾を被っていたり、子供の思い描く、漠然とした曖昧でうすぼんやりとしたイメージというか、動物の「赤ちゃん」のようなものだったかもしれないですね。
また、今思うと、家から何かが飛び出しているというイメージは学生のころ、版画作品をつくり始めたころからありました。大学の卒業制作は人が風のように家から出てきているというものもありました。

・・・版画作品に登場する形が立体になったということですか。

はじめは版画の中から出てきた者達だったんですけど、だんだん立体から生まれるものも出てきて、それをまたタブローに描くとかいう感じです。
今回の「イエネコのいる部屋」は立体が先でした。
自分の創った立体作品を見ながら描くことで、リアリティーが生まれるんじゃないかと思ったからなんです。それに昔からヨーロッパでは画家は小さい立体を創ってタブローを制作していたと聴いていたので、それも面白いと思って創ってみました。


・・・版画とタブローと立体がリンクしているということですね。

違う素材を使うことによって別の角度から自分の作品が見られる。一歩置いて客観的に見られるようになったというか・・・。

・・・多摩美術大学は、当時は1-2年生で油絵を学び、3-4年生で版画を学ぶんですよね。

ええ。版画を勉強したのは何かを習得したかったからなんです。それに油絵にあまりなじめなかったというか。むしろドローイングの要素の方が好きだったりしました。

・・・でも版画は、版の工程がいくつかあるので、もどかしくはないですか。

版画は技法的に、はじめから計算してやらなければいけないところがあるので、直接自分の感情を表現するのとは違うギャップがありますね。でもそれがマイナスだったかといえば、そうではなくて、版画はイメージを創りやすいというか・・・。版画はものを見て直接描写するわけではなくて、イメージが重要だったりする世界だと思うんです。ですから版画を制作したことで、自分の世界が引き出せたような気がしているんです。

 

・・・立体の素材は発砲スチロール?

最初のころの作品は、造型屋さんの知り合いに教わって、何点か発砲スチロールで制作しました。でも心配なので木にしたんです。

・・・え?これ木なんですか?凄く軽い。

これは木です。無垢なんですよ。
おもちゃのようなイメージで制作していますから触感が柔らかくて軽くないと・・・。
ですから飛行機の模型を作ったりするバルサという軽い木を使っています。バルサというのはパンヤ科の木の一つで、世界で最も軽い木です。小さなブロックで売っているんですよ。柔らかいので、力まず楽しくカッターナイフで削ることができるし、こう見えても無垢なので一本彫りなんです。一本彫りには拘っているんです(笑)。拘りがあるといえば今回のタブローも顔料で描いていますし、ウサギ膠を使っています。テンペラを意識しているというか。

・・・素材の話を聞くと面白いですね。ビックリしました。でも木彫は大きなものはできないですね。

檜や楓を使うと重くなりますから、もっと軽さを出すために、乾漆を勉強しようかとも思っているんです。そういう拘りは持ちたいですね。

〜28日まで。

(c)MINAMIDATE MAMIKO