Kaleidscopic Gallery Scene

皆川琴美 不思議館
2005年11月28日(月)-12月3日(土)



ギャラリー椿 GT2
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F TEL 03-3281-7808
10:00-18:00 日・祝休 http://www.gallery-tsubaki.jp/tsubaki.html


1975年 福島県生まれ
1998年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2000年 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程(油画技法材料研究室)修了
2000年 東京芸術大学美術学部非常勤講師(―2003年3月)
2005年 東海大学 教養学部 芸術学科-美術学課程 非常勤講師(―現在)

1995年 六人展/東京芸術大学学生会館・東京
1996年 3+3展/東京芸術大学学生会館・東京
1997年 3人展/ギャラリー華音留・東京
1999年 個展/銀座スルガ台画廊・東京
1999年 台東区長賞受賞作家展/浅草公会堂・東京
2001年 GROUP EXHIBITION/銀座井上画廊・東京 
2002年 個展『ア・ラ・モード』/島田画廊・東京 
2002年 NEWS展(NewStaff Exhibition)/東京芸術大学大学美術館付属陳列館・東京
2003年 個展 古今珍物集覧展(小野画廊・・東京)
2004年 個展『迎貧館』/島田画廊・東京
2005年 Reflex展/東京芸術大学大学美術館付属陳列館・東京
2005年 個展 GT2 GALLERY TSUBAKI


絵を描く際に私は常に念じることがあります。「もっと、もっと横にひろがっていけ・・・」と。限られたサイズの中で、どうしたらより自分が描きたかった世界みたいなものが出せるのかいつも困惑しています。絵はおとなしくその枠におさまるものではなく、もっとずっと彼方の世界へぶっ飛んでいくものだと思っていて、どうやら私の役割は、絵がひとりでに膨張を繰り返していけるような手助け、またはきっかけを与えるにすぎないような気がします。
絵の物質観(パネル、キャンバスなど)の側面が私にとっては邪魔な存在になります。そこで、永遠の広がりを可能にしてくれるのが「額」だったのかもしれません。額を付けずにそのまま絵を壁に掛けるということに対しても、何やら無機質なさみしさを覚え、絵の世界の表現さえ半減していることに気付いたのです。額は、絵のもつ膨張宇宙のような特徴をそれとなくやんわりと受け入れ、そして護衛しながらも、反対に物質的要素からはうまく逃してくれ、そして何ものからも解放してくれているのかもしれません。


・・・タイトルは「不思議館」

明治36年の第五回内国勧業博覧会(1903年大阪新世界で開催)の様子を、ある雑誌で見たのですが、そこには「不思議舘」という名前の幻想的なショーを見せるパビリオンがあったそうです。その中にカーマンセラー嬢という外国人の踊子が紹介されていまして、とても興味をもちました。この「不思議舘」という素朴な響きと、どこか見せ物小屋的なイメージに魅せられて、この名前をタイトルに使いました。

・・・そういえば「見せ物は、美術が生まれ育った家である」と、何かの本で読んだことがあるけれど、見せ物小屋の奇譚めいた感覚が、明治の時代の内国勧業博覧会にはつきまとう。日本古来の伝統主義と西洋のモダニズムが絡み合って、不思議な憧憬を呼び覚ますというか・・・。そういう印象はありますよね。

それが私も好きでとても興味を持っています。東洋と西洋の和洋折衷のミックスされた文化にとても惹かれていて、それをすごく面白いと感じているんです。例えば畳のある部屋に出窓があったり、私の実家もそういう家なんですけれども、自分の生活の中にあった身体に馴染んだ光景だから何の疑問も持たずに暮らしていて、そこには西洋に対する憧れと、自分が日本人として存在するアイデンティティーが入り乱れて不思議なイメージを生むというか・・・。

・・・不思議なイメージというのは、片一方だけでは見えて来ないマージナルな世界観なのかもしれませんね。作品はかなり物語性が強いですよね。

それはたびたび言われます。描いていくたびに物語が、次々と出てくるというか。ただ具体的なストーリーがあるわけではなく、様々な記憶が扉を開くように、フラッシュバックしながら出てくる感じですね。

・・・絵の中に記憶の断片が絡み合って、「不思議舘」での幻想的なショーを見るような、映像のイメージを強く感じます。

目の動きは結構よく意識します。見ている方の目の動きというか。ですからもっと横長や縦長の絵を描きたいと思っています。中世ヨーロッパのテンペラ画、もしくは日本の絵巻物にみられるような、パーツ、パーツで町並みや人が動いて違う世界をつなげていく時空感覚。そういう感覚がとても好きなんです。

・・・時間を繋げて永遠の世界へ誘うということですね。それがコメントに書かれていた額縁の役割でもある。絵具にキラキラしたラメが入っているのも、永遠への誘いに一役かっているのではないですか。

装飾的なことがとても気になるんです。シンプルなものが苦手で、私自身の育った環境も、1年中クリスマスのような感じだったものですから(笑)、それが当たり前だと思っていました。「物」の溢れる部屋に囲まれていたので、本当はもっともっと「物」を描きたいんです。

・・・だからといって絵画の物質感は邪魔なんですよね。

物質感があると、イメージの広がりを止めてしまうような気がするからなんです。それと画材にアクリルやガッシュ、キャンバスの代わりにケント紙を選んだのは、もうちょっと身体的な面で・・・元々、油絵は高校の時から描いていたんです。ただ麻布の目が、幾ら細かいものを選んでも画面に目が出てしまうので、それがどうしても気になり、つるつるの画面を作って油絵を描いていたのですが、油絵具自体にもだんだんと違和感を感じ、水彩紙を使っても、画面に凹凸があるので、ニュアンスがつきすぎて偶然性ばかりでてしまう。それも嫌だったので、今はパネルにケント紙を張って描いています。ケント紙は石膏地のフラットさに近いので使っています。

・・・パキとしたものが描きたいということですか。

とにかく次々と絵を重ねて描きたいんです。油絵を中断しているのも、絵具が乾くのに時間がかかるからなんです。でも最近は並行して油絵も描いています。イメージをどんどん描写できるアクリルに対し、油絵はゆっくりイメージを膨らませることができるので、この両方の感覚を今は楽しんでいます。

〜12月3日(土)まで。

(c)MINAKAWA KOTOMI


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